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自粛01

白く高く聳える風力発電機は、少ない面積の翼で大きな回転力を生み出す優れたシステムだ。しかしその性能が仇を成す時がある。それは台風などの強風時だ。強風なら効果的に発電できるように思われるかもしれない。しかし、強風を真に受けるとプロペラは高速回転を始め、かえって危険な状態となる。そこで強風時にはプロペラをロックするのである。

さて。君は、間違いなく今この日本という国を席巻する嵐と呼んでも良い。人々の行動は君の思い通り、ある程度抑制されている。日本の場合は、自粛という言葉に代表されるように、半ロック、といったような状態だろうか。例えば「不要不急」の解釈はおよそ個人に委ねられている。正解がないことと、全てが不正解である可能性があることは、同値である。そうして僕は正しさを失うのだった。

自室で長時間滞在することになった結果、僕は僕を閉じ込める様々な限界の存在を強く認識するようになった。県、市、敷地、外壁、天井、屋根、扉、床。物理的であるという意味では、老い、とかも入ってくるのかもしれない。

僕らは常に限界に追いやられている。僕はこの時「僕の部屋」という最小単位の物理的限界の中にいた。それでも境界の侵攻は止まることを知らない。そして限界はついに、行き場を失った僕の内面にも入り込んできた。そうして、僕自身が限界で仕切られていることを、僕が否応なく認識させられる事態に至ったのである。常に在る同居人の目を気にすると創作が麻痺するという限界。僕があの頃から何も変わっていなかったという、自分の成長の限界。自粛で浮いた時間を碌に使いこなせない自分の能力限界。自分が自分の限界によって分解されていき、僕という同一性がだんだんファジーになっていく。正しさを得られない僕はその侵攻に対する防御措置を持たない。どうすることもできない。

僕は君の影響で健康的・経済的な不利益は被っていない。また、差別の対象にもなっていない、今のところは。そうか、なら君には影響ないだろう、と君は思うかもしれない。でも君は無実ではない。君は僕の最深部の闇を少しずつ暴いていく。僕の行動をロックするのなら、僕の限界による僕の分解活動をも、ロックしてはくれないのだろうか。

 

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