違うブログ

どこかの誰かが書いたやつとは違うブログのこと

僕たちには理由がない【n/4】

別れようと言い出したのは彼女の方だった。その理由を教えてくれはしなかった、と書けば、僕が彼女に理由を訊いたと思われるかもしれないが、僕はそれを訊かなかった。理由を知ること、知ろうとすることに意味があるのは、救済の余地がある場合だけである。僕と彼女の関係においてそのような可能性はないことを、僕らはお互いに感じていたのだ。あの昼下がりのカフェにおいて、別れようという言葉が二人の間の糸にぶら下がったあの沈黙において、僕たちは無言で全ての可能性を共有していた。そして彼女が代金の半分ぴったりを残して去った後、宙ぶらりんの言葉とデートしていた僕の目には、僕と彼女の関係性以外の全ての関係性に意味があるように見えた。失ってからでないと真価には気づけない、という歌詞を思い出す。それを受け入れた人は現在に在ることができるのだろうか。彼女のことだ、きっとうまくいい相手を見つけるだろう。宙ぶらりんの言葉はやがて地に落ちる。

 

sourceone.hatenablog.com

sourceone.hatenablog.com

sourceone.hatenablog.com